ミーナ/ホロウ・シカエルボク
 
ていたが、ここを出てまた嵐のなかを歩くことなど出来ようもなかった、男はケンを家に招きいれた、風呂を沸かし、ケンを入れてやった、ケンは心から感謝します、と頭を下げて長いこと温まっていた、男はケンの荷物を乾かしてやろうと床に置いてあったナップサックを持ち上げた、そのとき、ショルダーのところについていたカンバッヂが外れて転がった、男はそれを拾い上げてもとどおりにしようとして雷に打たれたような衝撃を覚えた、ミーナのオーバーオールについていたものと同じだったからだ、それは彼が買い与えたものだった、いまではもう売っていないもののはずだった、もしも…これがそうなら……彼はカンバッヂを裏返した、うろたえて、たまた
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