ミーナ/ホロウ・シカエルボク
俺をこの世に繋ぎとめる理由はもうとっくになくなったのに…男は仕事にも行かなくなった、若いころに懸命に働いたせいで、余生をのんびり過ごすくらいならなんとかなりそうなくらいの金があった、だが男は、そんなことの心配など少しもしていなかった、どうして俺は生きているんだろう?
それから数年が過ぎた、嵐がひどい夏の夜遅く、ひとりの旅人が男の家のドアをノックした、旅人はケンと名乗った、小柄な、みすぼらしい男で、雨に濡れて余計にみすぼらしかった、道に迷ってしまって、と、ケンは言った、男は久しく人と話して居なかったのでしばらく言葉を思い出せなかった、ケンのほうもまた、男の様子になにかおかしなものを感じてい
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