ミーナ/ホロウ・シカエルボク
 
また、いま立っているところよりもいっそう深い地獄へと落ちていった、あんたも決して大丈夫とは言えない、と医者は言った、明日からあんたの注射も用意しておくよ、と…その夜から彼は眠れなくなった、妻が起きている間はずっと彼女のベッドのそばに居て、なんでもない風を装って話しかけたりした、妻は返事を返すことが出来なかったが、時々愛想笑いを返した、彼が娘と自分のせいで苦しんでいることは彼女にも判っていた、だが、彼女の心にはもう生きる気力というものがなかった、自分がもう人間ではないような気さえしていた、このままミーナのあとを追うつもりだった、彼女が安らかに眠った振りをして、彼がベッドを離れると、朝が来るまでずっと
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