いくつもの視線、捨てられた詩篇、真夜中のキッチンの音のないモノローグ/ホロウ・シカエルボク
では娼婦が客を取り
割れたシャッターの裏側に潜り込んで手っ取り早く済ませる
洗濯物が風に揺れて窓を叩くような音がしばらく続いて
この世で一番悲しい呻き声と共に終わる
コトが終われば二人は目を合わすこともない
天井の蛍光灯が
ほとんど死んでいる二十四時間営業のコインランドリーで
色褪せた服ばかりを洗う老人
雑誌も広げず
席を外すこともなく
回り続けるドラムを
ピンポン球のようなまなざしで見つめ続けている
ずっと見つめ続けている
たとえば特売の肉なんかに
ある夜きみが噛みつくとき
きみのたましいは負けたような気分を味わう
たたかうことなくありついた肉
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