まだ心から笑えないあなたへ/夏美かをる
通るようになっているかもしれない
所詮母親なんて単純で哀れな生き物
我が子が目の前でただニコニコ元気に笑っていれば、
その人生は満ち足りるのだ
だけど、あなたのその子は
突然逝ってしまった
二千十一年三月十一日の朝
いつもと全く同じように
「いってらっしゃい」と送り出した
あなたのその子はもう二度と
あなたの作ったご飯を
美味しそうに頬張ることはないのだ
4年経った今尚、あまりにも深く淀んでいる
あなたの涙を湛えた泉
ごめんなさい
あなたと同じ体験をしていない私は
その神聖な水を掬い取ることができない
ただそっと祈ることしかできない
海の向こうの彼の地で
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