失われた醤油を求めて ? たもつさんの詩の印象 1 ?/佐々宝砂
 
、この世から海がなくなってしまった」というフレーズの変奏であるように思えた。そしてその変奏は、確かに必要なことであると私には思われた。もはや、失われたものは、「海」のように雄大なものではない。それは醤油のように、卑近で俗なものでしかないのかもしれず、しかし寿司にソースをつけて食うのはあんまりだから、ひとは失われた醤油をほのかに夢想する。その夢想が、若さゆえのあやまちと簡単に片づけられるとしても。このように、たもつさんの詩には、しばしば、なんらかの喪失が描かれる。失われるものは、たとえば「醤油」であり、「たわし」であり、「ネクタイ」であり、「ネギ」であったりする。はなはだしいのは「天ぷら」という詩で
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