群像/飯沼ふるい
 
ながらマグロを解体するように何度も刀を押しては引いて、腹に一文字の穴を開ける。
血は一滴もでない。長身男が中年男を蹴って、横向きにさせたとたん、濡れた一塊の腸がどろりと地面に溢れる。中年男の胸がまだ上下している。
そこで目を背ける兄と知人。テレビの映像だった。自分はやべぇやべぇと言いながらその場を離れ、何度もその現場を振り向いた。
兄らとテレビを見ていた筈なのに自分だけいつのまにかそこに置いてかれていた。
砂埃と黄土色の荒廃した荒れ地を駆ける。すると、古い日本の宿場町の面影の残る、山の斜面をつづらに縫う田舎道についた。
折り返しのうねりの頂点に路が一つ伸びていて、そこに入ると、親戚の家の
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