群像/飯沼ふるい
 
家のような実家だった。葬式の準備で慌ただしそうにしていた。
自分も真っ黒の靴下を探したが見当たらないので、深い紺色の靴下で我慢した。
ネクタイも葬式用の黒一色のものがなかった。一筋の黄色い雷模様のついた趣味の悪いネクタイで妥協した。
準備を終えると、見知らぬ子供と風呂に入っていた。田舎の子らしい垢抜けない丸い顔の男だった。途中でその兄と思わしき男が入ってきた。小学校高学年くらいの男だった。
狭い風呂だったから兄はずっと立ちっぱなしだった。





『インディアン』と、ある全体の為の便宜的な名詞それ自体をさも彼の名であるかのように入植者たちから呼ばれていることなど知る由もない
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