群像/飯沼ふるい
んな上手に描けていますね」とかなんとかニコニコしながら褒めた。
「はぁ、あの指が」
僕の指が先生にはあんな歪に見えるのだろうか。などと本気で考えるほど僕は阿呆ではなかった。お世辞という感じくらい分かった。
先生は僕の絵を「元気なのがよく分かるね」と褒めてくれた。気恥ずかしかったけど、努めてなんでもない顔をつくった。
ただ、世界はある時代までモノクロで出来ているのだと思っていたくらいには無知だった。
カメラが映す人はヘルメットをかむったアメリカ人、外人とはつまり全員アメリカ人だ。そしてみんな妙に素早い。せかせかと行進するアメリカ人。
モノクロの人たちは今どこでなにしているんだろう。日
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