術後/草野大悟2
 
を受け取ったお礼の手紙くらいは書くべきだと思いますよ」
「倉田教授は、書かない、と言っていた」
「どうなさるかはあなたの判断です。でも、医者としてこの問題を乗り越えなければ、例えあなたが教授になったとしても、良心の呵責めいたものが心の中に残ると思います」
「……」
 村中は、自分の心の中の迷いをズバリと指摘されたように黙り込んだ。
 謝罪ではなく詩集のお礼という形で手紙を書こう、村中はそう決めて、夕食後、パソコンに向かった。

 拝啓 佐藤太郎様

 そう打ち込んだ途端、手が止まった。
 頭の後ろに両手を組み、ふーっ、と大きなため息をついた。
 心の中に、次々と湧き出てくる小
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