術後/草野大悟2
 
抜けるような気持ちに襲われた。
 翌日、医局に行くと倉田が顔を見せた。
「村中君の所にも送ってきた? 佐藤さんの詩集」
「ええ、昨日送られてきました。僕の自宅に」
「自宅に? 佐藤さん、君の自宅住所を知ってるわけ?」
「どうして住所を知っているのか僕にも分かりません」
「ま、それはそうとして、どう思うこれ?」
 倉田は、そう言ってヴァーミリオンの詩集をひらひらさせた。
「そうですね……、なんというか僕に対する怨念というか、不満というか……もの凄く強いようですね」
「著者略歴を見て驚いたよ。佐藤さんのご主人、高校の同級生なんだ。和解申立を自分で取り下げておきながら、忘れたころにこん
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