術後/草野大悟2
て。
口頭によるコンサルト及び匿名を条件に申し込みを受けた葛西教授は、渡辺が持参した資料を丁寧に読み解いていった。そして、小一時間がたったころ、渡辺の方を向いて、おもむろに口を開いた。
教授室のソファで待っていた渡辺は、思わず身を乗り出した。
「この宮崎学院大学でのオペには注意義務違反は認められませんね」
一瞬、我が耳を疑った。
「過失なし、ということでしょうか?」
「そういうことです」
「失礼ですが先生、そう結論づけられた根拠を教えて頂けますか?」
渡辺が首をかしげながら訊ねた。
葛西教授は、淡々と説明を開始した。
「本件では、外科手術を行う必要性及び緊急性が極めて
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