術後/草野大悟2
 
者で、ある程度の権威のある人物となると限られてくる。彼らがこのオペに注意義務違反があった、などという見解を示すはずがない。狭い脳神経外科専門医の世界で、そのような挙に出れば、この世界からはじき出されるのは分かりきっている。そんなリスクを冒す者がいるとはとうてい思えない。

 年が明け、平成十九年になっても家庭裁判所からの通知はなかった。
 村中が川上に電話すると、
「申立人は、きっとコンサルトに応じる医者が見つからないんでしょう。予想されたことです。まぁ、ここは相手の出方をゆっくり待つことにしましょうか」
 と、相変わらず自若とした口ぶりで言った。
 二月末、裁判所から、五月十二日午後
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