術後/草野大悟2
 
されていた。
 手にした文書を思い切り引きちぎりたい衝動を村中はなんとか抑え込んだ。  
「僕のオペにミスなんてあるはずがない。なのに、なんの論拠でこんなことするんだ、全く。林君、これ何らかの手当ができないのか?」
「手当と仰いますと?」
「例えば、相当額を払って申立を撤回させるとか」
「先生、そんなことをすればこちらの非を認めたことになりますよ。ひいては、大学病院そのものの尊厳を大きく損なうことに繋がります」
 横から新田が口を挟んだ。
「じゃあ、どうするんだ?」
「もちろん受けて立ちます。学部長も学長もその方針です」
「えっ⁉ もう報告がいってるのか。まいったな。
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