術後/草野大悟2
 
藤陽子という患者の夫から、弁護士を通じて当病院を相手方とした調停申立書が提出されたんです。これです」
 林が調停申立書を差し出した。
 村中は、ひったくるようにして受け取り、
目を皿のようにして読んでいった。
 申立書には、
『申立人に生じた左前頭部の急性硬膜下血腫は、本件手術において想定できない合併症ではなく、腫瘍による内減圧を行っても脳膨張が治まらない場合には、速やかに本件合併症の有無を確認し、硬膜下血腫切除及び出血点の止血措置を行うべきであったにも拘わらず、時期に遅れた処置のため、申立人を現状の状態に陥らしめたものである点で医療機関としての注意義務違反が存在する』
 そう明記され
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