幸せな人/葉leaf
最も幸せな人は木の上に住んでいる。風の満ち引きに体温の波をぶつけながら、細い枝とともにしなり、足がかりは隙間だらけで険しい空間を縫っていく。時たま地上に降りては大地の囚われの不幸を確認し、全ての原点であるがゆえの苦しみに同情する。すぐに木の上へと登っていき、原点の不幸が空間を上昇することで幸福に至る道筋を黙視する。
最も幸せな人は沼の中に住んでいる。手に足に絡みつく泥とどこまでも近く探り合い、泥のぬくみをかきわけて少しずつ前進する。脱出は見果てぬ夢として彼岸にたゆたう、だが夢は世界との諒解であり、世界の突端としての夢を磨き上げることで、泥の界面を丹念にそぎ落としていく。泥まみれの小さ
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