親父とわたしと息子/ただのみきや
親父がむりやり養子に行かされた
只野の家系は潰えるのだ
別段珍しいことではないのだろう
そらならそれでいい
息子は国立高専へ合格し
四月から釧路へ行く
五年間の寮生活
わたしよりとっくに背が高く
やっと買ってもらったスマホに夢中
わたしよりも良い男だ
唯一 生きなけばならないと自分を叱咤する
理由のもの
カンが強くて夜泣きばかりしていた頃や
平日の教会の駐車場でひとりぼっちシャボン玉をして
『 はじめはひとりだったけどー
ともだちたくさんふーえたー
またあそぼうね ばいばい 』
柔らかな声でひとり歌っていた幼稚園の頃の面影が
わたしに
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