親父とわたしと息子/ただのみきや
良くできて真面目だった
たぶん
他にどうしようもなかったのだろう
伊藤家の長男になった父の弟は
何でもこなす神童タイプだった
詩を書いて投稿しても入選した
父とは真逆
四十も過ぎた頃
語り部になった
おかしなもので売れに売れ
テレビに出たり映画にもなったり
やがて金でトラブルを起こし
行方を眩ました
去年長野で死んだことを聞いた(すでに死んでいた)
わたしには兄がいるが
兄には娘がひとりだけ
わたしには息子が二人(ひとりは先に天国へ)
わたしの作った「たまご丼」を食べているこの子が
結婚しなければ
あるいは子供が出来なければ
あるいは娘しか生まれなければ
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