大切にされなくなるときのために/岩下こずえ
なくなって、飢えて、騙されて、追われて、出口のない孤独に閉じ込められて、まともに考えることさえできなくなって、引き裂かれたから・・・。
しかし、所詮、ひとはひとりだろう。雄一郎はそう思った。ひとは、いつだって、孤独になりうるだろう。雄一郎だった意識は、そう思った。頬で感じる、この清潔なシーツの優しい肌触り。それにふと気付いて、顔をうずめて、ほおずりをする。その意識は思う。ずっと、大切にしてほしい。でないと、このシーツが汚れたとき、それは汚れたままとなる。もっと、とは言わないけど、ずうっと、大切にしてほしい。このまま、眠ったままでいることを、許しておいてほしい。
「俺だって、ひとりになる。家族
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