水瓶座の朝と夜/岡部淳太郎
 
橋を渡る
ここから先であえて水の味を嘗める
遠い背後で冷たくなった人びとは
絶句したまま 熱い指を池の面に浸す
最初から順番に数を数えて
今日もまた
汚れた者がひとり
明日もまた
汚れる者がひとり
食後の皿を眺めて
生きぬいた人は太り過ぎた腹をさする

風の温度に耳を傾けよ
ますます寒くなる空の下で
苦い煙を吐きながら
暖かい魚の頭を踏みつける
急がないことの淋しさをかみしめながら
どの苦痛を選ぶべきかに 迷っている

船は水を裂いて進む
千切られた水の 静かな悲鳴
月をふところに隠した者は
目をこすりながら
さっきまで見ていた夢の切れ端に
不器用な
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