書店/葉leaf
私は誰の役にも立たない人間だが、物の役には立てる。今さら人間に媚びる必要はないのだ。物を愛し、物と共に生き、物と会話して生きていけばいい。私は社会的動物であることを別の意味で置き換えた。つまり、物と私が織りなすネットワークこそが社会である、と。
男は私を書店に案内した。書店などという人間の精神や人間の交易の臭いのする場所は私を激しく嫉妬させるが、どうやらそれは森にあるらしい。そして、本には何も書かれておらず、何も書かれる予定もなく、ただ森に物として置いてあり、商業も成り立っていないらしいのだ。
私は本に恋い焦がれた。物との官能的な触れ合いしか私を慰めるものはない。物が置かれているだ
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