さよなら青から/春水八郎
 
乱暴に塗りたくられた油絵具、
光をバケツいっぱいにかけられて
割れた石膏像の深い影と
もうとんでしまった白い肌理
さざめく残滓にかすれながら立つ
うしろすがたの白い旋毛と
黒髪に流れる燐光のつぶを
木の葉の陰からまた見ている
ひとつ、またひとつ落ちる20才
髪の毛の流れ、その持ち上げられかた
風の吹きかた、束とその先端のこと
すべて克明に焼き付くのに
まだ、そこに立ったこともないモノクロ





おなじ夏休みに





夏、鳥羽の海に家族旅行に出かけた
休暇園の前の砂浜に陣取って
赤と青と白と黄の敷物をしいて
パラソルをたてて
そこに
[次のページ]
戻る   Point(5)