Miz 5/深水遊脚
経て動かしようのないものとなった。墓前に手を合わせることでその罪が許されるなら、どんなに楽になれるだろう。でもきっとこれは一生消えない。せめて薫子と対話ができるなら。ここに来るとき、私は墓石ではなく薫子をみている。澄花さんも同じ。でも私が話している薫子、澄花さんが話している薫子、そして本当の薫子。どれも違う。
「行きましょう、澄花さん。」
「あら、もういいの?」
「私のなかの薫子とはまた話すこともあるかもしれない。でも澄花さんのなかの薫子と話せるのは、今日だけという気がする。」
「なんか詩人みたいね。うまくお話ができるかしら。私もあの子の親だから、くせのある言葉遣いも理屈っぽさも慣れて
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