小学生の夜/宮木理人
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月がいつもより明るかったし、何か、今ぼくは、とんでもない世界に生まれて来てしまったんだって気がして、ふと見渡すと、部屋の壁が一面氷付けになっている。
よっぽど外の風が冷たかったんだろうな。
口のなかがなんだかムズ痒いような気がして鏡を見てみると、歯の裏に隠れていたピエロたちがぞろぞろ出て来て、舌のうえでサーカスをはじめている。
だからぼくはただ何もしなくても、口から勝手に賑やかな言葉がどんどん溢れてくるようになった。
ふとんに入って目を瞑り、妄想をする。
明日の朝になると、好きな女の子が突然家にやってきて「一緒に学校に行こうよ」と誘ってくれる、そんな映像を強くイメージする。
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