寒い夏/イナエ
った
法事などで親戚のものが集まったときなど
たいして飲めもしない酒で酔うと戦争の話をした
復員して間のない頃は
八路軍と銃火を交えて何人か殺したとか
襲撃されたあとには
仕返しに近くの集落を襲って略奪や暴行をしたとか
事実か作り話か知れないようなことを陽気に話していた
が 時が経つに従って 話は沈鬱になり
かつて国の繁栄を信じて死んでいった仲間を思ってか
取り残された無念感にさいなまれていたらしい
やがて 生き残ったのは役に立たないからさ
が口を突いてからもう戦時の話はしなかった
地道に生きていくことを選んで地方都市の公務員になり
町の一角でひっそりと
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