そこにある全てが失われていないというだけの/ホロウ・シカエルボク
なかった俺にブーイングを浴びせている
おい、俺が見えないのか、と
俺は胸中で奴らに反論する
俺の頭は失われているんだぞ
それがどういうことなのかお前らには判らないのか?
だけど
そんなことは馬鹿げたことなのだ
すぐにそのことに気づく
俺があそこにいたらきっと同じようにブーイングするさ
誰かの顔が失われることなど誰にも知ったことじゃないのだ
まして俺自身
痛みすらとうの昔に消えていたほどの手遅れなありさまで
なにもそこに生まれるはずがない
なにもそこに生まれるはずがないのだ
むしろそこには隠され続けたものしかなかったのだから
シーツはいつまでも温かくならなかった
失わ
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