無人島/オダ カズヒコ
だろうに、今のぼくには地面に根を張ること以外にすることがないのだ。笑いが込み上げてきた。体を震わすと、幾らか赤い実がパラパラとぼくの足元に落ちた。その上をイモムシがよじ登っていく。バカバカしい。今すぐ会社に行って仕事がしたい。注文書や請求書の処理や原価計算や見積りの作成だって3日徹夜しなくちゃ間に合わない程うんっと残っているというのに。女の子とイチャイチャするプランだって週末にはうんとある。こんな可笑しな話があるかよ!無人島に居て、周りに誰もいないのに、ぼくは自らの境遇にコンプレックスをいだき始めていた。おそらくそれなりの立派な巨木なのだろう。胴回りだって随分太いし、高さに至っちゃそこら中の木を眼
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