コガネムシ/mizunomadoka
 

そして給水塔やバナナを詳細にけれど大胆に描き

感動したコガネムシが一歩一歩

慈しむように砂の跡をたどって歩く姿を見つめた

私たちは意気投合してたちまち親友になり

また明日この場所で会おうと約束して手をふり合った

その晩、私はインフルエンザで高熱を出した

せめて誰かに言づてを頼むべきだった

数日後、急いで登校したとき

雲梯に彼女の姿はなかった

図書室で図鑑を調べると

コガネムシの成虫の寿命は一週間ほど、と

書かれていた

「明日はきみのことを描いてあげる」

「じゃあ明日は雲梯の上で待ってます」

そう言って嬉しそうに
[次のページ]
戻る   Point(9)