コガネムシ/mizunomadoka
そして給水塔やバナナを詳細にけれど大胆に描き
感動したコガネムシが一歩一歩
慈しむように砂の跡をたどって歩く姿を見つめた
私たちは意気投合してたちまち親友になり
また明日この場所で会おうと約束して手をふり合った
その晩、私はインフルエンザで高熱を出した
せめて誰かに言づてを頼むべきだった
数日後、急いで登校したとき
雲梯に彼女の姿はなかった
図書室で図鑑を調べると
コガネムシの成虫の寿命は一週間ほど、と
書かれていた
「明日はきみのことを描いてあげる」
「じゃあ明日は雲梯の上で待ってます」
そう言って嬉しそうに
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