薬売り/山人
 
ある薄灰色の薬は胃に収まっていった。
 一〇袋入りのその薬は、三食後の服用だったので、ほぼ三日でなくなった。やられたな・・・、あり得ないと思っていたのだが、上手いマジシャンのような手口にやられてしまったというわけだ。舌打ちをしつつ、雑用をこなしていると、ふと聞き覚えのある声が玄関先で響いている。
「その節はどうも。ちょうど薬が切れている頃かと思いまして、伺いました」
文句を早速言おうとすると、「どうですか?毎日自分の心を見つめる事が出来るでしょう?それが大事なのですよ」
・・・とまた、薬屋は領収書を切り始めた。「今度は一〇日分です、二回目だからお安くして、五二五〇円です」
しゃがんだ姿
[次のページ]
戻る   Point(5)