薬売り/山人
 
ず変わってきます」
淡々と事務的に医師のように言い放つと、「一〇袋入って税込みで三一五〇円です」返事も聞かぬうちに、「ハイこれ」と領収書を切ってしまっている。たしか、買う、とは言っていなかった筈だったが、言ってしまったのだろうか、誰かに指図されたかのようにぼんやりとしながらお金を渡し、薬売りを見送った。
 心が良くなる薬 なんとまぁ、大雑把でアバウトでそのまんまなんだろう、しかし、この大胆なネーミングが人を食っているようで憎めなかった。一億パーセント利くはずがないと口に出して言う。
 一回一袋食後とある。未だ午後五時過ぎたばかりだったが、冷奴を半分胃に収め、水で薬を流し込んだ。甘く酸味のある
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