三番目の彼女(後編)/吉岡ペペロ
浄めてくれるのだろう。
こんな紅色を使って絵を描いたらなにかの賞をとることは間違いないだろう。
でも歯で痛いことには変わりがなかった。
ツートップといるあいだだけサエコのことを忘れることが出来た。
サエコに殺される事情があったことに悲しくなっていた。
ホテルに入るとサエコはいつも俺のカラオケを聞きたがった。
それにうっとりして勝手に感じやすくなっていた。
サエコは家族の話や職場の話、友達や子供の頃の話をよくしていた。
こんなにいっぱい話をしたらもう誰にも話すことなんかなくなるの、と言っていた。
俺もいまそういう喪失のなかにいた。
玄関をあけるといつもの静けさだった。
朝の
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