元日の夜に/草野大悟2
クの叫びになっているだろうことは、想像に難くない。
「うーん。旨い。絶品ですねぇ、獺祭。機会があったらぜひ試してみたいと思っていたんです。君たちもいただいたらどうだい」
「はい、喜んで」
田中の言うことには、とても素直に従う二人。彼らの中には、謙譲の美徳だの遠慮だのという概念が欠落しているらしい。というか、完全に欠落しているぞ! 私は、またもや胸の中で絶叫するのであった。
その間も彼らの手は留まることを知らず、おせちとお猪口を行ったり来たりしている。
「あのう、よろしかったら、お雑煮いかがです?」
ああ、美智子。君は、なんて、なんて、うーん、産まれっぱなしなんだ。なんという抱擁力
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