言葉の切れ味2 迷刀たち/イナエ
 
関車に曳かれた貨車で
馬や牛や石炭が運ばれるのが見えた
ある日幾つもの無蓋車が
砲身の突き出た物をシートに包んで運んでいった

明くる日 それをあの優れた軍国少年に話した
そのとき彼の機嫌が悪かったのか
彼の知らない情報をぼくが知ていたことが気に触ったか
「お前はスパイだ」と切り付けてきた
取り巻きどもも一斉に斬りかかってきた
この言葉は肥後守より鋭くぼくを抉った

その日からぼくは全ての友人を失い 暗い心で 
ひとり
教室の片隅に佇んでいるほかなかった
学校が空襲で焼け落ちるまで

   * * *
 
   非国民・国賊

もっと鋭く斬れたのは
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