言葉の切れ味2 迷刀たち/イナエ
 
のは「非国民」だった
大人だって斬られるのだ
警戒警報の出たある夜
今度はこの町が空襲されるという
根拠の無い不安にかられ近所の人は一斉に逃げだした
けれども 郊外に出る踏切の遮断機は降りていた
その前では在郷軍人が怒鳴ったいた
「こんなときに町を捨てて逃げるのか
 お前らは非国民か 国賊か」

  ああ「非国民」神国日本から除外された日本人
  竹槍の訓練や防火バケツのリレーを休んだ「国賊」
  この言葉に斬りつけられたら
  即座に死んでしまうのだ
あの八月一五日これらの刀が折れるまでは

  * * *
  
  時代錯誤

ぼくが新制中
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