僕   春と修羅 序より/梼瀬チカ
 
いる

生きてよ
見えているのか?
生きてくれよ
聞こえているのか?



いつものように
現実という
虚無の中の幻を見ながら
ぼんやりと予感しながら
僕は
もう一度僕は
僕に言い聞かせながら

「いかにもたしかにともりつづける」

夢の続きのどこか
いつかのいつかの
暁の射す
まばゆいばかりの
光の中の僕を
僕たちを
発見してゆくんだろうか

「因果交流電燈の
  一つの青い照明です」

気付けば夜更けが
僕を待っている
一日の帰り道
一本の電信柱に
ついた街灯が
僕を照らしている

(ひかりはたもちその電燈は失われ)
[次のページ]
戻る   Point(3)