僕   春と修羅 序より/梼瀬チカ
 
僕    〜春と修羅 序より〜

続いている
重い重い
暗い暗い
罪深い
歴史の中から
一つの魂が浮上する

「私という現象は」

その誕生が
いつなのかは
知らない
少年が何処からか
来て、此処にいる
少年はやがて若者になり
跳躍を試みる
跳ねて弾んで
飛び跳ねていた者が
ある日突然
何者かが彼を中傷した
誰か達が彼を嘲笑う
かつてあれ頬
若くしなやかに柔らかで
透き通る程であった者が
汚され濁され毒される

「仮定された有機交流電燈の」

原初以来、繰り返された
時の中の深い深い
暗闇
海神の果て
若者は今一度
深くまた深く
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