中村梨々詩集『たくさんの窓から手を振る』について/葉leaf
 
停されていくように、中村の中の大人と子どももただ対立しているだけではない。この引用部において、中村は、数という理性的なものを登場させ、数によって全体に統合を与えているし、「組み立てる」というのも大人らしい統合の働きである。だが、ここでは「わたし」の数が増えたり、「わたし」が集められる前のバラバラな状態であったりもする。子ども的な不合理で秩序だっていない感覚が、大人的な秩序によってうまくまとめあげられているのがわかる。
 かつて「永遠の子ども」という文学のモチーフがあった。例えば『星の王子さま』のように、文学作品において、主人公が子供としての自然と自由と純粋さを保つために夭折するというものである。
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