中村梨々詩集『たくさんの窓から手を振る』について/葉leaf
 
線が競い合いながら同居している。中村の詩の緊張感は、詩作を駆動する葛藤をそれなりに忠実に映し出すことから生じていると言えるだろう。

さまざまな眠りに就いた。鳥の数が増えた。鳥の数が増えたぶんだけわたしの数も増えた。夜明けに飛び立つ鳥は、帰って来るとき数を減らした。飛べないわたしは夜明けになるとわたしを集めて組み立てる。雨も雪も分かるのだけど、雨に近いもの雪に近いものがみんな、うっすらとした灰色に覆われていくし、いたずらな数を言うので増えたり減ったりしたような気分が味わえる。
       (「夜、鳥を飛ばす」)

 だが、人間が長ずるにあたって青春の葛藤が和らぎ、対立物もだんだん調停さ
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