中村梨々詩集『たくさんの窓から手を振る』について/葉leaf
 
見つめ表現するのである。

皮膚からガラスの焦げた匂いがする。姿をかえて異国。白い砂をすくって音は静か。真後ろの水際を呼ぶ、おいで。手のように握って頬のようにつねって陸にあがれば、断たれた水路。風速にしかばねが切れていく。ばららあばラ骨、戯れる。(わたしはいちどこわれたかたち。(はじめて会ったものにこわされてゆくの))。
       (「春雷」)

 詩を書くという行為は、何らかの葛藤に駆動されていることが多い。青春期における人間は、社会と自己との葛藤や理想と現実との葛藤などで、生理的なレベルで声を上げざるを得なくなる。その場合、内容は特に問題とならない。苦しみをそのまま叫びたてるケー
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