竹林の横道/游月 昭
新築の汲み取り式のマンホールに隠れていた。かくれんぼの鬼がなかなか見つけてくれないので、底に丸くなって待った。
真っ暗な中、遠くで友達の声が聞こえる。しかし私は身体が底に貼り付いて動けない。
「ケンちゃーん」
と叫ぶが、何故か声にならない。叫ぼうとすればするほど苦しくなり、ただ涙が溢れるばかり。耳をすますと、激しく水が流れる音。水が上から降って来る。家の持ち主がトイレを流したに違いない。水はどんどん嵩を増し、私を浸す。
「死ぬ!」
と思ったところで、水は跡形もなく消えた。
どうやら夢を見ていたようだ。私は立ち上がってマンホールの蓋を開けた。黒い空に上がった満月が明々と私を照らした。
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