愛と孤独の彼方へ/葉leaf
 
る。わたしに牙をむくことはないが、ときおり覗かせる歯は鋭い。わたしは膝を折って、木の根本に座り、豺の背に体をよせた。豺はわたしの匂いをかぎ、口元をなめる。互いの体温だけを頼りにした。
       (「火」)

 第三部「豺(ヤマイヌ)」では、主人公は豺に取り囲まれ、また豺と親密な交渉をする。これはもちろん、光冨の少年時代の記憶と願望なのかもしれない。同輩たちから敵意を持って迎えられる一方で、自分に似た仲間と仲良くしたい、そういう気持ちが投影されているのかもしれない。だがやはり、ここに現れるテクストの詳細さとエンターテインメント性は、光冨のリアルの在り方にある程度根差しながらも、そこには回収
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