愛と孤独の彼方へ/葉leaf
 
はミステリーとスリルを生み出し読者を楽しませる語りであって、この語りは明らかに、読者に語られる内容を虚構だと受け取るように要請している。我々はいわば観客席に座って、光冨の織り成す虚構の舞台を、一つの完結したテクストとして観賞する必要があるのである。ここには、第一部「ひとの声」のようなリアルな空間ではなく、虚構的なテクストの空間が開かれているのが分かるだろう。だから、読者はこのテクストを光冨の実体験に還元する必要は全くない。読者は一人一人違った風に、主観的にこのテクストを読み、また楽しむことができるのである。

灰色の毛皮のところどころに褐色の部分がある。鼻から額にかけては黒っぽい色をしている。
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