愛と孤独の彼方へ/葉leaf
との不思議なやり取りが描かれる。女は確かに人間のようだが、声は風にしかならない。女は主人公に好意を持っているし、主人公も女に好意を持っている。だがそこから恋が発生するのでもなく、表情による豊かなやり取りがあるだけである。確かにこれは、光冨が、母親から愛されなかったことを補償するためにつくりあげた癒しの劇だとも見ることができる。だが、それだったら、ここまで情景を丁寧に描写し、ここまで豊かに想像力を膨らませる必要はなかったはずである。それに、バーから部屋、仕事場へと場面を移したり、その合間に女の声を降らせたり、部屋になぜか砂があったり、夢の中で洞窟に居たり、光冨の語りは非常に工夫に満ちている。それはミ
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