愛と孤独の彼方へ/葉leaf
 
れる。
 さて、これまで見てきた、孤独から連帯へ向かう主体であると同時に連帯の中でも孤独であり続ける主体であるという光冨の在り方は、彼の生々しいリアルの在り方である。だがこの詩集には、そのようなリアルの自分を吐き出すだけにはとどまらないもう一つの平面がある。それが虚構の平面である。

女の寝息のなかで、ふたたび目を覚ますと、淡い光と陰の部屋は、洞窟だった。その洞窟の入り口からは、紺色の凪の海が見えていた。女の背中越しに、ぼんやりと夜の海を眺め続けていた。わたしの手の甲に、女が無意識に手を重ね、吐息をもらした。
       (「砂と太陽。」)

 第二部「潮騒」では、主人公と「女」との
[次のページ]
戻る   Point(1)