イメージだけがひとり歩きだす場所で/ただのみきや
 
埋もれた海星の化石
世界を齧る味覚障害の死人による理不尽な復讐だった
だがどんなに振りかぶって投げてみても放物線を描いて
見渡せる場所にしか落ちはしない殺戮のリンゴその中心の真空で
わたしはわたしたちはひとつであり分裂し劣化する
無数の堕胎された成りかけの比喩や剪定された過剰な修辞
繋ぎ合わされた言語的疑似生命として帰属する領土を求め
空白を食むこの行進に世界と和解し疎通する意思はなく
まだ見ぬひとつの贖罪の詩片を磔にするための十字架だけが
担がれたままやがてそれが何であったかも忘れ去られ
黒々と世界の目蓋が閉じるまでこの静かな進軍は続く
そうして物語の行間
虚実の境に身投
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