ぼくには世界を救う力がない。でも世界を変えたいと必死に思う。/南無一
ない
破壊された瓦礫のうえを這う光の声には歌がない
ただひたすらに暗みへと傾斜してゆく世界に
呪祖の唾を 吐きつけろ
殺すことが快感とさえなる悪夢に囚われた兵士に
侮蔑の刃を 突きつけろ
世界は偽善と妬みに充ちている
漆黒の世界と虚白の世界
二重螺旋の捩れた虚構の縄梯子を握り締め
落下の恐怖に怯え 骨ばった膝が怯んでいる
毎朝、うすっぺらな紙の一頁に
悲惨も 残虐も 象形文字のごとく整然と並んでいる
日常性とは 無関心でできている
閉ざされたサルの 目と 口と 耳と
憐憫とは いつも乾いた優しさで包まれている
弾丸の飛ばない 遠方から
錆びた贋金を懐に
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