埋めるために1.10/竜門勇気
僕が泣いていたら心配気に低く吠えたり
確かにそこにいたのだ
肛門から小指の先ほど糞が顔を出している
毎朝六時に彼は父に庭に放ってもらって糞をするのが日課だった
今日も本当は今頃庭木の根を嗅いで
小さな体で大きな糞をして
夕暮れまで出窓で揺れるゴールドクレストの枝を見たり
郵便配達に遠吠えを聞かせたり
咎めるような目で散歩をせがんだりしていたはずなのに
大好きな母の膝に頬を添えたり
父の帰りに喜びながら小便を漏らしたり
早朝の僕の帰りに静かに出迎えの声を上げたりしていたのに
こんな日が来るのは
こんな日が来るのは
明日でも良かったはずなのに
今僕はルイ・アーム
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