埋めるために1.10/竜門勇気
ームストロングの聖者の行進を聞きながら
こんなふうに格好つけた詩を書いて追いだそうとしている
送り出そうとしている 手をふろうとしている
キーボードはただのぼやけた線の塊になる
二重になってぐるぐる回ったりもする
心の中には彼はいる
けど それは彼じゃない
ごまかしてしまうよりは
ひとつぶ残らず悲しもうと誓う
目を閉じさせてやろうとまぶたを触ると
眼球が空気の抜けた風船のように柔らかくたわんだ
それでもその目はやさしく僕らを見ている
最期の世界を見ている
妹がやってくる
こんな雨粒がある庭に
彼を葬りたくなかった
でも時は来てしまった
抱き上げるとまだ背中は暖
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