ニューハーバー/草野大悟2
夜もそうだった。いつも通り始まった愚痴話に、心底うんざりした智子は、「篠塚さん、いいかげん愚痴話やめなよ。くどいんだよね。私、くどい人大嫌いなんだ。もう付き合い辞めることに決めたから。さよなら」
呆然としている篠塚を残してそそくさと店を出た。
二か月後の雪の降る夜、その店で、初めてユタカと出会った。智子は、職場の同僚四人と一緒だった。
店は、カウンター席のみの、客が十人も座れば満席になる程の広さ。おでんと大きなだし巻き卵が名物である。昭和四十年創業で、東京下町育ちの雪子さんが一人で店を切り盛りしている。
智子たちが上司の悪口で盛り上がっていた時、「ユタカちゃん、久しぶり」、ふらりと
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