ニューハーバー/草野大悟2
 
れていった。

 そのころ西橋は、東海中央警察署で刑事一課員の取調べを受けていた。わずか三十歳で法学部教授になっている俊才で、将来、学部長どころか学長間違いなし、と言われる程の男である。取調べには、経験豊富な山下警部補が当たった。
 西橋は、逮捕以来一貫して、合意の上だった、と犯意を否認した。山下は、その供述を無理に否定するような取調べはしなかった。西橋の言うことを確実に聞き取って、調書化していった。そのことがかえって西橋を不安にした。
取調べは、午前中に三時間、昼食休憩をはさんで午後三時間行われた。西橋は、犯意を徹底して否認し続け、逮捕翌々日に、身柄付きで東海地方検察庁に送致された。
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